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細長い半島の先をショートカットする運河<細木運河/愛媛県宇和島市>

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運河と地峡の宝庫・南予一帯のリアス式海岸。これまで二つの運河を紹介させて頂きましたが、三つある運河の三つ目がこちらの運河です。

運河へのアクセス

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その運河へは、南予の中心都市・宇和島市街から向かいます。
高規格道路・宇和島道路の「宇和島南IC」の近くから分岐して県道37号へ。20分ほど走ったところ、この場所で県道346号へ右折して「蔣渕(こもぶち)」方面へ。ここまでの経路は遊子水荷浦の段畑へ向かう道と同じです。

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「水荷浦の段畑」と「細木運河」があるのは同じ「三浦半島(みうらはんとう)」
衛星写真からは、南予らしいリアス式の複雑な海岸線を見て取ることができます。元々は陸続きの半島だったものが、現在は運河航路開発によって先端の蔣渕付近が切り離されました。が、道路橋によって繋がっているので地続きと言って差し支えないと思います。

特徴的なのが遊子(ゆす)にしろ蔣渕(こもぶち)にしろ、集落の多くが東(右)に海と接するように形成されている事。
西(左)または北(上)の背後に山が来るように集落を形成することで、冬に吹く厳しい北西の季節風の影響を和らげて、家屋や生活を守ることができる。三浦半島の海岸線はどちらの面も切り立った崖なので、先人たちは「どうせイチから建てるなら東側にしよう」と考えたのかもしれません。

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三浦半島先端部分に位置するのが「蔣渕(こもぶち)」集落。

宇和島でさえ日本各地からすごく遠いのに、その先の先とも言える場所。日本の田舎は奥が深いです。

この方向で見る湾の右奥(集落の右)に運河が貫通していて、100トンクラスの船舶が通行することができます。そうでなければ時計回りに三浦半島を回らなければいけません。対岸の九州大分方面へ渡る時はそれなりの大きさの船舶で出て行くのでしょうが、近隣都市の宇和島へ行く際もかつては半島廻り。距離が延びることで増大する燃料代はもちろん、風や潮に左右され易い外海に出る危険と隣り合わせでした。

細木運河

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運河部分に架かる橋にやってきました。

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ここは元々「いるか越え」と呼ばれる地峡(ちきょう)。周辺より土地が低くなっている部分で、小舟であれば南から北、もしくはその逆へ人力運搬が行われていた場所。地名こそ異なりますが、ここも「船越」と言えます。

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橋の上から見る南側。ここまで来ると蔣渕(こもぶち)集落は間近。

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橋の上から見る北側。
見えている山なみは法華津峠(ほけつとうげ)から西へ延びる半島。西予市明浜町(せいよしあけはまちょう)付近です。

写真に写っていませんが、この右(東)方向に宇和島市街。右斜め(北東)方向は、奥南運河(おくなうんが)がある旧吉田町。

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運河のスペックは、

延長...190m
幅員...20m
水深...3m

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現橋の南側に、旧橋のコンクリート橋脚が残されています。形状からして、吊り橋だったのでしょうか。

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初代細木運河は、昭和31年(1956)起工、昭和36年(1961)竣工。

総工費1億円を投じて建設されました。

細木運河停留所

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この場所へは公共交通機関である宇和島自動車のバスで来ることができます。

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上り便は早朝に運行されてから午後の運行
下り便は午後に集中した運行

子どもたちの通学や、自動車を運転することができない高齢者の通院などに準じたダイヤになっているものと思われます。三浦半島の人口規模や人の動きを考えると、必要十分の運行本数。

※少し前の訪問なので、現在は減便されているかもしれません

運河によって向上した人々の暮らし

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蔣渕へ移動して、かつての「いるか越え」、現在の「細木運河」を遠望します。

豊予海峡(豊後水道)に面した付近の海域は潮流が速く、三浦半島北西部「ぶぶしの瀬戸」は古くから航海の難所として避けられてきました。住民が宇和島の街に出るためには、いるか越えに小舟を着けて地峡を越え、再び渡海していた。細木運河の開通が、住民の安全と生活向上へ寄与した効果は、とても大きなものだったことでしょう。

細木運河

< 自家用車 >
高松駅から 約3時間40分、262km
松山空港から 約2時間、119km

※ 主な地点からの最速・最短距離

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この記事を書いた人

野瀬 章史
野瀬 章史/ゲストハウスそらうみ 四国八十八ヶ所霊場会公認先達 法名・照山の僧籍

四国高松でゲストハウスそらうみを運営する傍ら、四国八十八ヶ所霊場会公認先達として、お遍路さんの案内を務める。法名・照山(しょうざん)の僧籍も持つ。趣味はバイクツーリング、カヌー、登山、鉄道、料理など。日本の全離島・全地点を隅々まで回るべく、愛犬しょうとの日本一周旅の途上。