四国のおすすめ観光スポットをご紹介

山奥に広がる天空の異空間 < 鳥形山森林植物公園 / 高知県仁淀川町 >

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最近人気のテレビ番組ではありませんが、google earthを眺めていると何やら気になるスポットが目に入ることがあります。
こちらのお山は周辺が真っ白。富士山ほどの標高であれば年中雪が積もった「万年雪」が考えられますが、西日本に残雪を見ることができるような高いお山はありません(最高所が石鎚山の1,982m)。山頂近くまで自家用車と徒歩で行くことができるので、「白いお山」の正体を眺めに向かいます。

アクセスはヨサク酷道から

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場所は高知県仁淀川町。「ヨサク」こと国道439号を進むと、そのお山への分岐点があります。行く先は「鳥形山森林植物公園」
酷道マニアには有名なヨサクと言えど、この周辺は改良が施されて片側一車線の区間が多く、むしろ走り易い。

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目指すお山はあちら。国道439号を分岐すると、道幅は一車線。なおかつ鉱山があるため大型車の往来があります。離合等に注意。

鉱山会社が管理するお山

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山頂も近づいた頃、トンネルが現れました。こちらのお山で鉱山を営む会社の専用道路。

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もちろん許可車両しか通行することはできません。

とても長いトンネルがどこへ繋がっているのか地図で確認すると、鉱山事務所へ続く道のようです。

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「鳥形山森林植物公園」は、鉱山とは別の場所。大型車両に気を付けて、山を更に登って行きます。

鳥形山森林植物園

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到着!

「公園」の響きに惑わされてはいけません。ここにはただただ自然が広がっています。

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「森林」「植物公園」

他、こちらの看板に記されていることは全て正解ですが、あくまで楽しみ方は自分自身。植物ガイドさんが常駐しているわけでは無く、花や木ごとに説明板があるわけではありません。間違いなく言えることは「晴れたら絶景」。四国の山々を見渡すことができます。

鳥形山へ片道15分の登山

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鳥形山森林植物公園内にある展望台へ行くことにしました。
いくつか入口があるようですが、一番分かり易い木の鳥居がある場所から入山。事前に調べたところ、15分くらいで展望台まで行けるようです。

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山へ入りました。この日は少々曇りで自然の光は弱い日だったのですが、原生林と山肌が白いことがありとても明るい空間。期せずして森林セラピーに来た感じです。

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白い山肌の正体はこちら。

石灰石です。

鳥形山自体が石灰鉱山であり、日本三大カルストの一つ・四国カルストはこの場所から直線距離にして10km~20kmの至近距離。同じ岩脈の台地が続いていることになります。

カルストはアルファベットでは「Karst」と書く、ドイツ語由来の単語。石灰岩が侵食されて出来た地形を指します。
ドイツ語由来の日本語は、登山や医学の分野でよく登場しますが、カルストもそのようです。

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神社が現れました。

山登りで山頂に立つと、そこには山の神さまを祀るお社が置かれている...
通常は山頂に祀られる神さまがですが、鳥形山についてはこの場所。理由は展望台に立ってわかりました。

まずはこの場所に来させてもらった御礼の参拝をしてから、

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すぐ後ろにある階段を上って展望台へ。この先には絶景と異世界が広がっていました。

石灰岩を産出する鳥形山鉱山

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展望台からの眺め

今日の鳥形山は、石灰石を産出する鉱山。豊富に採掘される石灰石は、セメントなどに姿を変えて私たちの暮らしを支える反面、当地においては昭和46年(1971)からの採掘により、山の標高は約200mほど下がった。

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上から切り崩していく露天掘(ろてんぼり)は、狭い日本の国土ではあまり見られない鉱山の形。

「鉱夫さんたちが頭にヘッドランプを点けてトロッコに乗り坑道へ入っていく」
これが、一般的に日本国内で想像する鉱山のおしごと(=地下坑道)。

鳥形山は異なります。
お山を眺めていると重機が作業する音が山々に響き渡りますが、鳥形山で操業を行う重機車両は海外規格。国内では類を見ない大きさのダンプカー等が活躍しています。

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東側の斜面はこの通り。鉱山の事務所があります。

鳥形山の石灰岩の埋蔵量は世界有数で、試算ではあと100年採掘できるほどの量があるそうです。

採掘された石灰石は、ベルトコンベア等で須崎市へ運ばれそこから船に載せて積み出されたり、セメント工場で製品に変わります。

鳥形山は土佐藩の御留山(おとめやま)として木々の伐採が禁じられていたため天然林が生い茂り、それこそ「鳥が翼を広げた形」の山でした。

現状を見ると自然破壊と取ることもできますが、石灰から製造するセメントは私たちの安定した暮らしに欠かせないものになっていることを考えると、複雑な心情になります。

360度展望

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鳥形山展望台(※頂上ではない)の魅力は、360度展望。天気が良い時には四国山脈の山々と、瀬戸内海・太平洋両方の海を眺めることができます。

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この日は太陽は出ているものの、雲が多く眺望にはあまり向かない空模様。

山頂に円形のレーダードームが置かれたお山は「中津明神山」
「なかつみょうじんさん」と読みます。山頂が高知・愛媛の県境になっていて、

中津山(なかつさん)...愛媛県
明神山(みょうじんさん)...高知県

それぞれ呼び名が異なる山名を合わせたもの。

同じ方向に西日本一の標高を誇る石鎚山(1,982m)が見えるはずなのですが、少し雲が多いでしょうか。この時は見えませんでした。

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風力発電機が多数見えるあちらは、津野町の「風の里公園」

この場所(鳥形山森林植物公園)より街から近く、お山の稜線そのものが公園。あちらからも鳥形山を見渡すことができます。

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が、こちら(鳥形山森林植物公園)の展望台からの方が鳥形山の鉱山を見下ろすような形で眺めることができて、個人的にはお勧めです。

奥に見えるとんがり山は不入山(いらずやま)。名前の由来は土佐藩の御留山(おとめやま)で、入山が禁止されていた事による。
そのおかげか、一部では手つかずの原生林が残されていて、ここで見る山の反対側斜面から流れ出る水は、蛇行を繰り返しながらいくつもの河川の流入を受け、やがて大河となり、清流と称されるようになる。

誰もがその名を知る最後の清流・四万十川。その源流の森を抱えるお山が不入山です。

鳥形山森林植物公園

< 自家用車 >
高松駅から 約3時間40分、190km
高知龍馬空港から 約2時間10分、91km

※ 主な地点からの最速・最短距離
※ google earthで見ると、石灰岩採掘により山肌が白いことがわかります

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この記事を書いた人

野瀬 章史
野瀬 章史/ゲストハウスそらうみ 四国八十八ヶ所霊場会公認先達 法名・照山の僧籍

四国高松でゲストハウスそらうみを運営する傍ら、四国八十八ヶ所霊場会公認先達として、お遍路さんの案内を務める。法名・照山(しょうざん)の僧籍も持つ。趣味はバイクツーリング、カヌー、登山、鉄道、料理など。日本の全離島・全地点を隅々まで回るべく、愛犬しょうとの日本一周旅の途上。