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県界を示す標石が残る旧道 < 境目峠 / 愛媛県四国中央市・徳島県三好市 >

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県境(けんざかい、けんきょう)
県界(けんざかい、けんかい)

日本の地方行政単位である 47都道府県の分け目の事を そう呼ぶ。

通常 県界は、山の稜線や 川、海等の 自然によって分けられている場合が多い。
一般的に、人が往来をためらうほど大きな天然の要害を越えては 交流が発生しにくく、異なる文化が発達するため。それゆえ 生活圏の違いを理由に統治する行政団体(=都道府県)が変わるのは、理に叶っていると言える。
ただ、それも橋やトンネルの新設 他の交通機関の発達によって、県設置以前は行き来が乏しかった地域の行き来が、後年 盛んになった例は数多く存在する。

また 他の線引き基準として、
藩政時代の力関係によって線引きが行われ 県を設置する際にそのまま踏襲された地域があれば、明治初年の廃藩置県政策によって 当時の世情に合わせて県界が引き直されたところもある。
幕末の戊辰戦争で 明治新政府に付いた藩は廃藩置県の際に優遇された。旧幕府側に付いた方は、分割や他藩と合併させられる等 冷遇された。などの説もあります。

いずれにしても 県界の線は、文化圏の変わり目であったり 歴史の優劣など、ロマンを秘めているものと言って良さそうです。

愛媛/徳島県界・境目峠

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境目峠(さかいめとうげ / 愛媛県四国中央市川滝町境目・徳島県三好市池田町佐野)

四国に4つある県の二県のうち、愛媛と徳島の両者を分ける地点の一つが こちらの峠。

もっとも、
この場所は官道(=現国道格)として開削されたものであり、古道としての境目峠は 厳密には別の場所です。
この場所自体も 前後に狭小なヘアピンカーブが存在することや、冬季には積雪があり交通が遮断されてしまう等 交通の難所であったため、新道として 昭和47年(1970)に 境目トンネル(=現役)が開通。旧道となったこの道は現在 地域の方々が往来する生活道路であり、旧来の遍路道を求めてこの場所を通る お遍路さんが主な通行人です。

旧式道路案内標識・白看板

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県界なので、それを示す県境標識が存在します。

もう朽ちるに任せている様子でありますが、この標識は 昭和25年(1950)に制定され 昭和46年(1971)まで用いられた旧式道路案内標識。

通称 "白看板"
マニアにとっては 発見すると興奮する、今や珍しい物です。

県界を示す標石

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横たわる国道192号標識 →通称 国道おにぎり

旧字体が刻字された標石

愛媛縣川之江● ※田に丁、町の意味と思われる
四里七丁 (=約17km)
従是東徳嶋縣三好郡

※一里... 約4km、一丁... 約109m

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徳嶋縣聴 弐拾参里五丁 (=約93km)
三好郡役所参里三拾五丁 (=約16km)

こちらの標石は、大正6年(1917)に 三好郡によって建立されたもの。
峠を越えれば 確かに徳島県の行政区域に入りますが、この石が建てられた当時 県庁が置かれた徳島市へ行くには、相当な困難があったはずです。

吉野川が流れる池田町(=三好郡役所があった街)へ出て、川を舟で河口まで下って ようやく到着。舟は風任せでしょうから 決まった時間に出るものではないし、川も天候によって増水/減水があります。仮に定期船があって運航ダイヤが掲示されていても、それはあまりアテにならなかったでしょう。 ※想像
陸上を歩いていくにも、藩政時代に整備された 旧阿波街道(伊予街道)がありますが、今のように改良された道ではなく、時間に加えて 労力も相当必要であったことが想像できます。

川之江(現四国中央市)
から
池田(現三好市)

の当該区間は、国鉄の予定線があったものの 未成に終わり、国鉄バスが運行されてきました。それも近年廃止になり、この県界を越える公共交通機関は存在しません。

境目峠の標石

< 自家用車 >
高松駅から 約1時間30分、85km
高松空港から 約35分、63km
※ 愛媛・徳島両県にある空港ではありませんが、こちらが最寄り空港になります

※ 主な地点からの最速・最短距離

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この記事を書いた人

野瀬 章史
野瀬 章史/ゲストハウスそらうみ 四国八十八ヶ所霊場会公認先達 法名・照山の僧籍

四国高松でゲストハウスそらうみを運営する傍ら、四国八十八ヶ所霊場会公認先達として、お遍路さんの案内を務める。法名・照山(しょうざん)の僧籍も持つ。趣味はバイクツーリング、カヌー、登山、鉄道、料理など。日本の全離島・全地点を隅々まで回るべく、愛犬しょうとの日本一周旅の途上。