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古き良き佇まいを見ることができる、徳島近郊のローカル駅・前編 < 石井駅/徳島県石井町>

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明治32年(1899)2月の開業と、長い歴史を持つJR徳島線(佐古-佃/67.5km)。沿線各所で、その当時の佇まいを見ることができるのが、当路線の魅力の一つとなっています。

藤が有名な花の街

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石井駅(いしいえき/徳島県石井町)

鹿児島県の志布志駅(志布志市志布志町志布志)ほどではないものの、所在地は「石井町石井字石井」

駅の開業は明治32年(1899)2月。
徳島鉄道(後の徳島線)開業時に設置された5駅<徳島・府中・石井・牛ノ島(現牛島、読み同じ)・鴨島>の一つと、歴史はかなり古い。

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名西郡石井町(みょうざいぐんいしいちょう)

徳島市の西隣。キャラクターに描かれているように「藤(ふじ)」が有名なお花の街。春、町内にある地福寺(じふくじ)や童学寺(どうがくじ)に代表される藤棚は必見。

石井駅の位置と路線分けの妙

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駅の位置は、県中心の徳島駅から約10km来たところ。徳島線の中では最も利用者が多い駅。

*「あれ、徳島駅や阿波池田駅は?」
路線の分け方の妙で、前者は高徳線・牟岐線の駅。後者は土讃線の駅。徳島線の両端が、それぞれ拠点となる駅から一駅先から分岐することによります。

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徳島市の近郊区間になるので、運転される列車は多い。

「単線」「非電化」
路線としては、日本屈指の本数を誇ります。

赤字は特急列車。利用者の多さに反して昼間の特急列車の一部が石井駅に停車しません。これは徳島駅が近く、近距離のために速達運賃を払って特急列車に乗車する人が少ないためと想像します。

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ローカル線の中間駅ながら、午前・午後の一部時間は駅員さんがいらっしゃいます。
徳島駅の近郊区間<鳴門線・牟岐線の一部・鳴門線の一部・高徳線の一部>は乗客が多く、JR四国内では瀬戸大橋線に次いで乗車率が良い区間。ロケーションは地方の鉄道そのものですが、実情はローカル線ではないのかもしれません。鉄道が賑わっているのは、街としてとても良い事です。

大正4年製造の跨線橋

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石井駅にある、プラットホームを繋ぐ跨線橋

トタン屋根
鉄骨
羽目板
敷板

同じ徳島線の「蔵本駅」を彷彿させる、無骨なブリッジ。
気温が高く日差しが強い日だったので、反対側のホームでは跨線橋の日陰を利用して列車待ちされています。

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実はこれ、大正4年(1915)製造の跨線橋。「鐵道院」の刻字が光ります。

1915年は前年から始まった第一次世界大戦中。

Uボート(潜水艦)
航空機
毒ガス

本大戦で初めて使用された兵器が数多く存在。
新兵器・交戦国の多さ・期間。様々な要因が合わさって、死傷者の数がけた外れに増加してしまった側面があります。

鉄道の父

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「汽車製造株式会社製造」

「日本鉄道の父」と呼ばれ、長州五傑<井上聞多(馨)・遠藤謹助・山尾庸三・伊藤俊輔(博文)・野村弥吉(井上勝)>の一人・井上勝(いのうえまさる)が鉄道庁長官を辞職して明治26年(1893)に起業した、鉄道車両メーカー。昭和47年(1972)に新幹線等を製造する川崎重工業に吸収合併されて、現存しない。

井上勝は日本における鉄道黎明期を牽引する傍ら、

野義真(おのぎしん)
崎弥之助(いわさきやのすけ)
上勝(いのうえまさる)

らと共に、岩手県雫石町・滝沢市に跨る広大なエリアに農場を開設した事でも知られる。
代表三名それぞれの頭文字を取って「小岩井農場(現小岩井農牧)」と名付けられました。

列車が入線

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と、じっくり跨線橋を観察しようと思ったら、列車がやってきました。

これはチャンス!
と、ギシギシ軋む敷板階段を駆け上がり、ブリッジから列車撮影。こちら穴吹・阿波池田方向。

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徳島方向

画像が曇ったように見えるのは、ガラス越しに写真を撮らないといけないためです。

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忙しい!

両方向の列車が到着して反対側ホームへ来たたころで、徳島方向の列車がすぐに発車。あれもこれも撮ってるとどっちつかずになるので、写真を撮るのは跨線橋と共に映る穴吹・阿波池田方面の列車に絞りました。

大正時代製造の跨線橋と、平成時代製造の軽快気動車の共演です。

2番線プラットホーム散策

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列車が行き、駅から誰もいなくなりました。散策にもってこいです。

石井駅2番線のプラットホームにある藤棚。石井町は藤の花が有名な、花の街。時期的に少し雑草が生い茂っていますが、春のゴールデンウィーク頃には毎年きれいな花を咲かせ、列車の乗客を楽しませていることでしょう。その時期に来てみたいです。

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長いホームの端っこ(徳島方向)にやってきました。

徳島線お決まりの、プラットホームが増床されていることがわかります。

現在はせいぜい1~4両編成のディーゼル車両による頻発運転なので、ホーム端っこは必要ありません。
かつての国鉄は長距離・大量輸送を前提としていたため、長いプラットホームは機関車が牽引する長大編成の列車の発着のために必要でした。

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キロポスト発見!

その路線の起点からの距離を知らせるもので「10.2km」を示しています。

が、徳島線のキロ程を調べてみると、石井駅は「58.6km」。これは反対側の佃駅(つくだえき)が起点となるため。
反対側の端っこ(キロ程の上では終点)である佐古駅からに直してみると、石井駅は「8.9km」。この数字としても、ここのキロポストとは数値が異なります。

誤差の理由は、こちらのキロポストが徳島駅からの距離で計算されている便宜上のもののため。佐古駅から徳島駅は「1.4km」なので、「8.9km」と併せると、表示の「10.2km」に近付きます。

路線としての両端...佐古/佃
実質的な両端...徳島/阿波池田

徳島線には佐古や佃を起点とする列車は運転されていません。このずれが実際の運用との誤差要因になっています。

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駅舎は改装されているものの、建造当時の跨線橋と増床されたプラットホーム。時代は令和ですが、昭和国鉄の雰囲気を持ち続けている駅として、石井駅は貴重です。

石井駅

< 自家用車 >
高松駅から 約1時間10分、65km
徳島阿波おどり空港から 約45分、29km
< 公共交通機関 >
JR徳島線・石井駅下車

※ 主な地点からの最速・最短距離

続き

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2019,9/10 古き良き佇まいを見ることができる、徳島近郊のローカル駅・前編 < 石井駅/徳島県石井町>

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この記事を書いた人

野瀬 章史
野瀬 章史/ゲストハウスそらうみ 四国八十八ヶ所霊場会公認先達 法名・照山の僧籍

四国高松でゲストハウスそらうみを運営する傍ら、四国八十八ヶ所霊場会公認先達として、お遍路さんの案内を務める。法名・照山(しょうざん)の僧籍も持つ。趣味はバイクツーリング、カヌー、登山、鉄道、料理など。日本の全離島・全地点を隅々まで回るべく、愛犬しょうとの日本一周旅の途上。